事例・実績

真剣な姿勢は、応募者に伝わる。「男性/女性」にとらわれず、望む姿を実現するオーダースーツサロン

作成者: JobRainbow|Jul 31, 2022 7:03:28 AM

株式会社シーアールエー

男性/女性という規定が根強く影響する服飾の世界で、トランスジェンダーのお客様が「自分らしい姿」でいられるように。
一人ひとりの希望に沿ったオーダースーツを提供する「Aster(アスター)」を経営する、株式会社シーアールエー代表取締役 井出さんに話を伺いました。

ダイバーシティ推進を意識するようになったのはなぜでしょうか。

きっかけは、5年前に新聞で上司のアウティングによって自殺した人がいると知ったことです。社会のおかしさを感じて、怒りを感じたんです。そこから「どうして自分は怒っているんだろう」と考えてみると、根本に私の人生観があると気づきました。

 

私は「自分らしく生きる」を大事にしています。だから、十代の頃から親や周囲の環境と戦い、意思を貫いてきました。
しかし、セクシュアリティは努力でどうこうするものではありません。自分らしく生きられないのが、努力不足とかではなく、ただ「そう生まれたから」って理不尽な話で。もし自分もセクシュアルマイノリティとして生まれていたら、意思を貫くことなんてできなかったんじゃないか……そう思い、友人にすぐ感想を伝えると、「トランスジェンダー(中でもFtM)の方がスーツ選びに困っている」と教えてくれました。その友人を店舗にお招きして、スタッフ3名と一緒にLGBTについて基本的なところから学び始めたのが、すべてのはじまりですね。

 

だからサービスにも、LGBTへの視点が欠かさずあるんですね。

例えば、5月には船橋に「ファブリックレインボー」をオープンします。4月に入った新社員がお店のロゴマークをデザインした、主にFtMの方に向けたお店です。
弊社は、トランスジェンダーの方が自分らしさを表現できるスーツを仕立てていますが、既存店舗で従業員がいくら「気にせずご希望をおっしゃってくださいね!」と言っても、安心できない当事者の方がいると気づきました。というのも、店舗では他のお客様の目があったり、プライバシーが守られていないこともあります。だから、もっと守られた空間でお客様の「こうしたい」を形にしていきたいと思い、新店をオープンします。

 

また、今まではスーツだけを扱っていましたが、靴・ネクタイ・ワイシャツなどスーツスタイルに必要なアイテムは他にもあるので、サイズ感の大事なそれらをワンストップで揃えられる店舗にしたいと思っています。以前ご来店されたトランスジェンダーの方が、自分に合うバッグを探してうちにご来店くださったのですが、期待にお応えすることができなかったんです。だからこそ、すぐ行動に移しました。500人ものトランスジェンダーの方を採寸してきた私たちのノウハウを活かせば実現できるんじゃないかな、と。
いずれは「自分に合ったものがない」と感じる全ての人にとって素敵なアイテムがある、「なりたい自分を表現できる店」にしたいと思っています。

 

数あるサービスの中から、なぜJobRainbowを選んでくださったのでしょうか?

ある日、当社がジェンダー関係なくお客様の欲しいスーツをお作りしている、というのを知った星真梨子(JobRainbow COO)さんから電話があり、スーツアドバイザーとしてイベントに出展を依頼されました。正直、最初こそ怪しいなと思いましたが、ご来店いただき御社の取り組みを聞いた時「素晴らしいな」と感じたんです。というのも、5年前に新聞記事を読んだ時、「こういうことが起こらない企業を集めて就職を手伝えたらいいな」「うちならジェンダーによる差別・服装規程などもないし、自分らしく働ける人が多いんじゃないか?」と考えていたので、もう行っている企業があることに感動しました。
合同説明会にアドバイザーとして参加すると決めた後、御社の営業の方とお話するなかで「御社なら大卒採用のニーズがあると思いますよ」と言われ、求人を出すことにしました。

 

従業員数が10名規模のなか新卒社員を計4名採用されたそうですが、応募者を惹きつけるポイントはあるのでしょうか?

手前味噌ですが、私たちが真剣に取り組んでいるのが伝わっているんじゃないかなと思います。SDGsを意識する企業は増えてきましたが、その姿勢が元々企業にあったものなのか、言葉をただ表面的に利用しているだけなのかは少し接するだけで見抜かれてしまうものです。
弊社は相手に喜んでもらうため、セクシュアリティに関係なくお客様の望む形のスーツを提供してきました。だから、お客様だけでなく社員も自分らしさを体現できるような会社なんだな、と感じ取ってもらえるのかなと。実際、自分たちがなにか特別なことをしているという認識はありませんでした。ご来店されるお客様の5%くらいがトランスジェンダーというのもあり、接する機会が多い中で自然と企業風土になっていました。

 

JobRainbowからの応募者に共通した特徴はありますか?

JobRainbowという媒体を信頼しているがゆえに、そこに掲載されている弊社のことも最初から信じてくれています。多くの方が、事業内容や紹介動画を事前にしっかり見てくださっていますし、なかには親御さんにも話していないことを打ち明けてくれる方もいます。ちなみに、21卒はJobRainbowから複数人入社してくれましたが、22卒に関してもすでにJobRainbow経由の方数人に内定を出しています。企業ページでダイバーシティの考えをきちんと伝えられているからこそ、他の求人サイトからは応募してくれないような、素晴らしい人材がきてくれるなぁ、と感じますね。

 

また、なにかギャップのようなものを感じたとき、すぐ教えてくれる人が多いです。ある新入社員が、外部の研修を受けたときに「女性の足の角度・位置」「男性の服装・お辞儀」などの項目があって傷ついた、と報告してくれました。それを言ってくれたからこそ、社会に出てすぐの段階で突きつけられる「男性/女性らしさ」の多さに気づけましたし、「じゃあそれをどう受け止め、うちは企業としてどうアクションして社会を改善すればいいんだろう」と考えるきっかけが生まれました。

 

ダイバーシティ推進に取り組むうえで、大事にしていることはありますか?

『LGBTとハラスメント』など、とにかく書籍を読みケーススタディは学んでいます。しかし、一番大事にしているのは「やってみる」ことです。何かをやってみると、当然失敗もします。しかし、それは上手くいくための過程で、「ダメ」だったわけではありません。誰かのためにしたことが、考えてもみなかった問題に阻まれて上手くいかなかった……などはよくありますが、やらなかったらそれにすら気づけていません。恐れずにやってみることで、組織に足りない部分がわかってきます。
例えば、明日は弊社で障がいのある実習生を受け入れるために、特別支援学校に電話します。世の中にいるどの社長も、特別支援学校に電話することはできますよね。でも、「受け入れたら大変」が先行して二の足を踏んでしまいます。でも、一緒に働いて初めてわかることがあるはずですし、「いい企業」と言われている企業はこういう試行錯誤を繰り返しているから、綺麗事ではない価値を生み出せているんだと思います。なにより、いざとなったら人間と人間、話しあえばわかる……と思っています(笑)

 

ダイバーシティ推進に取り組むべきか悩んでいる企業の方に、メッセージをいただけないでしょうか?

単一性が重視されている社会は終わりました。皆が同様に成長している時代は、他社と同じようなことを教わった通りに素早く処理する能力が必要でした。しかし、今の経済は右肩下がり。つまり「他社と同じ」ようなことをしていれば、「他社と同じ」右肩下がりです。厳しい経済の中で企業を成長させ、スタッフを安心して生活させ、社会にどう貢献するかを考えた時、カギになってくるのは「個性」です。生産性という物差しだけでダイバーシティは測れません。その人がどんな人で何ができるかに注目することで真価が発揮されるからこそ、ダイバーシティ経営は成長のために不可欠です。ベターではなく、マストなんです。

 

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