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3万人の社員にLGBTQ+に関する知識を浸透させるべく、研修・e-learning・コンサルティングをフル活用。理解度は約96%に!

作成者: JobRainbow|Jul 31, 2022 7:00:58 AM

西日本旅客鉄道株式会社

総社員数約3万人の西日本旅客鉄道株式会社さん。なんとその内の4割以上がLGBTQ+に関するe-learningを受講しています。今回は、そんな西日本旅客鉄道株式会社でダイバーシティ推進に携わる人事部の片岡さんと執行さんにお話をお伺いしました。

LGBTに対する取り組みを始めようとしたきっかけを教えていただけますか?

ニュースやテレビでよく話題に上がるな、取り組んでいる企業も増えてきているな、ということは漠然と感じていました。しかし2019年6月から人事部で人財開発に携わり始め、「主体性・相乗性・多様性」という当社の人財育成ビジョンを見直したとき、女性活躍以外の「多様性」が手付かずではないか、と感じました。

当社は社員が3万人近くいますから、当然そこにはLGBTの方がいるでしょう。だとすると、自分は対応や言葉遣いなどの知識が足りているのだろうか?と思い、まずはJobRainbowさんのセミナーに参加してみました。

 

数ある企業・団体の中からなぜJobRainbowの研修を選んでくださったのですか?

たしかに、LGBT研修を実施している企業様は複数あります。しかし、JobRainbowさんのセミナーで聞いた当事者のリアルな話はわかりやすく、インパクトのあるもので、「このセミナーの実りを持ち帰りたい、他の社員に聞いてもらいたい!」という想いが湧きました。

 

また、セミナーを受講していた他の企業の方が積極的に意見を交わす姿を見て、置かれている状況がそれぞれ異なる企業・団体が、みな多様な人財の働きやすい環境を実現しようとしていて、そんな彼らがJobRainbowさんを頼っている。なら自分たちもJobRainbowさんなら信頼してお任せできるんじゃないか、と考え人事担当者・管理職向けの研修を依頼しました。

 

研修の中で特に反響のあったポイントはどこでしょうか?

講師の方々の当事者ヒストリーですね。カミングアウトしている当事者と接したことがない受講者が多かったようで、「目の前にいる当事者」の生の声に触れたのは、非常に印象に残ったそうです。

受講者の役職や職種に応じてパターン別の研修を実施していただいたのですが、「どういう対応が望ましいか」のワークがあった回では、自分の周囲・職場にいるかもしれない当事者が過ごしやすくするにはどうすれば良いかを「自分ごと」として捉えられた受講者が多かったことが、事後アンケートからわかりました。

また、内容ではありませんが、運営についても、動画の共有・システム設計の方法など、研修の細かい疑問も柔軟に対応してくださりありがたかったです。

 

研修の他にe-learningもご利用されていますが、そちらを導入したきっかけを教えていただけますか?

当社は3万人近い社員がいる、と申し上げましたが、人数だけでなく職種も多様です。オフィスワークから乗務員、設備の保守までありますし、働く場所・時間帯もバラバラです。そうなると、「社員全員が集まって、まとまった時間で研修を行う」ということは、現実的に難しいです。

では最も効率のよい啓発はなんだろう、と考えたとき、e-learningなら各個人が都合の良い場所・時間で視聴できるし、また、わからなかったところを何度も繰り返し視聴できるのではないか、と思い導入いたしました。

 

社内にも人権啓発の教材があるとのことですが、それと弊社の研修・e-learningにはどのような違いがありましたか?

数多くのお客様と関わるため、会社の発足当初から時代に合わせ内容を変えながら人権教育は行ってきました。講師を招く拠点単位の講演会・勉強会や、映像による教育も実施しています。しかし、性差・障害者・外国人・ハラスメントなど毎年テーマを変える中で、「LGBT」は性差やハラスメントなどのテーマのいちトピックとして登場するだけで、メインテーマにはなっていませんでした。

 

そのため「聞いたことはあるが、それが何なのか」「何をすればよいのか」「自分に関係あるのか」といった状態だった社員が、LGBTをメインテーマとしたJobRainbowさんの研修やe-learningによって「自分ごと」として捉えることができました。

 

受講後、社内で具体的に変化したところはありますか?

お客様アンケートの性別記入欄が本当に必要かどうか、該当部門から相談を受けましたね。また、自社でオリジナルのアライステッカーを用意したところ、500人以上の希望者が手を挙げてくれました。なかには、JobRainbowさんの研修を受けた後いただいたステッカー※を「これつけてるよ!」と見せてくれる社員もいて。こんなこと今までありませんでした。

 

啓発が浸透してきたことが、まさに「目に見えるかたち」でわかるのはとても嬉しいです。

また、「当社は保守的な会社だから、D&Iへの取り組みって受け入れられないんじゃないか……」と思っていましたが、賛同してくれる人の多さに驚きました。「親戚にLGBTがいて、その人のために何かしたいと思っていたんだよ」と言ってくれる社員もおり、自分自身当社に対してのステレオタイプがあったな、と気づけました。

※JobRainbowではLGBT研修を受けてくださった方にアライステッカーを配布しています。

 

弊社のコンサルティング・相談窓口を利用してくださったのは、どういった背景があるのでしょうか?

企業規模ゆえに、多くのものは内製化するのですが、ダイバーシティ推進の取り組みは事情が異なります。というのも、日々刻々と環境や社会情勢は変わります。今日正しいことが、1ヶ月、1年後には変わっているかもしれません。施策を実行する上で「1回勉強したからOK!」ではなく、当事者や専門家の最新の知見、業界や他社の動向を踏まえたアドバイスを継続的にいただきたいと考え、コンサルティングをしていただくことにしました。

 

相談窓口に関しては、「顔見知りかもしれない社内の担当者ではなく、社外の専門家に問い合わせたい」というニーズがあるのではないかと思い、依頼いたしました。

 

研修後のアンケートで受講者が「取り組むべき」と答えたものの中で、実際に取り組み始めたことはありますか?

特に声があったのは、「職場の理解促進」「相談窓口の設置」「同性パートナーシップなどの社内制度」の3つでした。これらは元々、LGBTに関する取り組みをしよう、と決まった当初から少しずつ進めておりましたが、最後に関しては、2020年10月に社内制度を一部改正し、結婚休暇の取得や配偶者の社宅利用といった福利厚生を同性パートナーでも利用できるようにしました。

制度などを変更する際、今までは他の企業の取り組みを見て「これは取り入れよう/やめよう」と石橋を叩きに叩き、ようやく動くか動かないか……という慎重さでした。しかしLGBTに関しては、社会情勢と研修のインパクトが合わさり、スムーズに3つも実行することができました。社内でも「ここまでやるんだ!」と驚いた社員が多かったようです。

 

取り組みをきちんと実行していくことで、社内でカミングアウトしたくてもできなかった人が「会社が制度で受け止めようとしている」と安心してもらえるんじゃないかな、と思っています。

制度を変えて初めて、申請するか悩む声が耳に届きました。そのとき、今までもニーズがあったのに、それを言えずにいた社員がいたと気づけました。

 

ご担当者様自身、取り組みを始めて考えに変化はありましたか?

「自分はこの場ではマジョリティだ」と思っていても、マイノリティのために行動することが大事だと考えるようになりました。というのも、自分はセクシュアリティではたまたまマジョリティですが、見る能力・属性を変えれば、どこかの点ではマイノリティでしょう。

そう考えると、どんな場面でも一概に「マイノリティだから大変/マジョリティだから楽」とは言えませんし、そうなると「自分は今どっち側」など突き詰める必要もありません。

 

見える違い・見えない違い、どこかで線を引こうとすれば人はマイノリティにもマジョリティにもなりえます。一人ひとり違うところがあるのは当たり前ですし、本質的には「ダイバーシティ推進」という概念自体なくなることが真のD&Iではないでしょうか。

 

お客様や求職者から取り組みに対する反応はありましたか?

プレスリリースで社内の制度改正を発表した際、SNS上で「おカタい企業だと思ってたけど、JR西日本ってこういうことやっているんだ!」といった反響がありました。

 

ただ、反応はやはり社内からの方が大きいです。ふだん人事が求職者やお客様に対して発信できることは限られています。しかし社内の変化についてなら積極的に伝えられるのではないか、と自ら動く社員が増えた気がします。実際に、「外にもっと伝えていきたい!」という声もありました。

 

ダイバーシティ推進に関する取り組みがうまくいっていない・どう進めるか悩んでいる、といった企業にメッセージをいただけないでしょうか?

正直、当社でも取り組みを始める際は、心配の声もありました。LGBTに関する社内制度改正が発端となって、アウティングやハラスメントにつながってしまうのではないか。その場合の対策はできているのか……という声がありました。規模の大きい企業だからこそ、リスクについてはより敏感なのかもしれません。

 

しかし、ハラスメントに繋がってしまったら確かに問題ですが、変えるために一歩踏み出さないと、マイノリティが”自分らしさ”を出せない状態は必ず続いてしまいます。状態を変えるには、リスクがあることは承知の上で、対策をできる限り講じながら早急に動かなければならない、と気づけました。

実際、施策を通じて初めて当事者の存在をしっかり認識できました。そこからLGBTに関する話以外でも、誰にも言えていないストレスがある社員がいるのでは、と想像できるようになりました。労働生産人口が減少するなか、入社してくれた人財には能力を存分に活かしてもらいたい、そのためには今のままではマズい、という危機感に繋がりました。

 

「1回教育をしました、はい理解しました、終わり!」ではありません。取り組んでみて、手応えがあった/なかった場合それぞれ「次は何をするか」「形式はどうするか(e-learningや研修など)」考えて、取り組んで……を繰り返すことが必要です。